「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.32
1996年8月号
(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)
素人にもできる地盤調査法
地盤の強さを「地耐力」といいます。この、建物を載せたときに安全に支持できるだけの強さを見込めるかどうかを判定するのに、最も確実な方法として、実際に地盤調査を行うのが一般的です。調査結果のデータを分析すれば、かなり客観的に地耐力を推定することができるので、建物を支える基礎の形状を選定する際には不可欠の指針になります。
しかしそうは言っても、我が家の庭の地盤がちょっと気になったくらいで、地盤調査を実施するのでは、いかにも大げさ過ぎます。土地を物色して何件も下見してまわるにも、そのつど調査を依頼するのでは手間がかかって大変ということもあるでしょう。
そこで、「あたらずといえども遠からず」の程度でも、ごく手軽に地耐力を見分ける方法はないものかと考えてみたのが別表の「素掘り判定法」と「親指判定法」です。土木工事の専門家であれば、経験的にだれでも無意識にやっていることなのですが、非常に軟弱な地盤を見落とさずにすむという観点では、なかなか役に立つはずです。
用意するものは鉄筋のような硬くて細い棒状のものです。長さは1メートルくらいは欲しいのですが、それを現地に持参します。棒を地面に刺してみたときに、スルスルと抵抗なく貫入できる地盤であれば要注意です。よほど軟弱な地盤であれば、園芸店で売っているアサガオのつるをからませるための竿などでも一気に押し込めます。
親指法の場合は、地表にじかに指を押し当てるのではなく、30センチほど地面を掘ってから試してみるとよいでしょう。一般に地表部は土が乾燥して薄い膜が張ったような状態であることが多いのです。ときには人間や車両の通行によって踏み固められているために、表面だけ締った地盤のようになっていることもあって、親指では、「非常に大きな力を要する」ことがあるのです。スコップで薄皮をはいでから親指を押し当てれば、それだけ正確な感触に近づきます。
人間が地面に立ったときに、足の裏にかかる体重を1平方メートル当たりの表面積に換算し直したとすると、約5トン程度になるといわれています。この値は偶然にも通常の戸建て住宅の標準的な基礎の「接地圧」(基礎から地盤に伝わる荷重)と同じくらいになります。すなわち、敷地を歩いてみて足跡がくっきりと残るようであれば、標準基礎で支持させるには地耐力の不足している地盤であるかもしれないのです。ぬかるみや雪道を歩けば、靴がめりこんで足を取られてしまいますし、落ち葉の厚く降り積もった場所や、クッションのよく効いたソファの上に立つと、ふわふわと体が沈み込んだ感じになりますが、そうした感覚はすべて足元の地盤が軟弱であることを直感的に知らせてくれる危険信号なのです。
地盤の硬さ | 素掘り法 | 親指法 |
---|---|---|
非常に柔らかい | 鉄筋を容易に押込むことができる。 | 親指をたやすく押込める。極端に軟弱なときはこぶしが貫入できる。 |
軟らかい | シャベルで容易に掘れる。 | 適度に力を加えれば親指を押込むことができる。 |
中位の硬さ | シャベルに力を入れて掘る。 | 親指でへこませることができるが押込むには非常に大きな力を要する。 |
硬い | シャベルを強く踏んでようやく掘れる。 | 親指の爪を入れることができる。 |
非常に硬い | つるはしが必要。 | 親指の爪さえ入らない。 |