「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.24
1995年12月号
(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)
”活断層”と同様に危険な”埋没谷”の存在
災害は、いつでも突然にやって来るものですし、起きてみえれば起きたことの必然性が後付けで理論整然と説明されたりもします。たとえば、これまで大きな地震があるたびに、特定の現象だけがクローズアップされ、どのメディアでも異口同音に同じような話題作りをするということがありました。「液状化」という言葉は、今では知らない人がいないのではないかと思うくらい流布していますし、北海道南西沖地震(1993.7.12)では奥尻島を襲った10メートルを超す「津波」が、兵庫県南部地震では「活断層」が議論の的となりました。
そのつど地震のメカニズムなりの被害要因が分析され、そのように繰り返し説明がなされることによって一応の理解が行き渡ります。しかし、ここで注意をしなければならないことは、まずだれの目にも明らかなことから説明がなされ、とっさに判断のつきかねることは、時間がだいぶたってから新聞の科学欄などで地味に報道されるのが常であるということです。しかも、起きたことは報道されても、起こらなかったことは、当然のことながら「事件」として扱われません。
地震にはそれぞれ特有の揺れ方があって、兵庫県南部地震の周期は0.3~1秒が卓越していたといわれていわれています。この周期が、たとえば3秒以上の長周期(沖合いを震源とするプレート型地震で発生する可能性がある)で、しかも震動時間が兵庫の10数秒に対して1分程度と長くなった場合には、今回の地震でびくともしなかった超高層ビルに何らかの被害が出るかもしれないのです。高層建築は、4秒前後の周期の地震動に共振しやすいので、倒壊しないまでも内部がめちゃくちゃになる可能性はあるのです。
これは神戸で「起きなかったこと」の一例ですが、起きたことの中にも、もっと注目されてよいのではないかという事例があります。
ある建築コンサルタント会社の調査によると、倒壊率50%以上の地域のうち、JR三宮駅周辺の高速道路沿いの地下に、最大深度約20メートルの「埋没谷」が確認されたというのです。埋没谷とは、かつての谷筋が土砂によって埋まってしまい、地表では平坦にしか見えない地形を言います。埋没谷では地震波が谷の側面で反射を繰り返したり、複雑な波形を生んだりして地表の揺れを増幅しやすいといわれており、地震の際の危険地域としてマークしておくに越したことはないと思うのですが、兵庫県南部地震では「活断層」ほど大きくは取り上げられませんでした。
過去にボーリング試験が多数行われている地域であれば、試験結果を丹念に拾い集めることによって、埋没谷の位置を特定することはさほど困難なことではありません。首都圏などではすでに多くの埋没谷が確認されており、その結果は、地形を分類した「土地条件図」を入手することができれば、ちゃんと埋没谷が記載されているのをだれでも見ることができます。
実は、関東大震災においても、家屋の倒壊率と埋没谷とのあいだに明確な因果関係があったことが指摘されており、埋没谷とその延長線上の谷地が激震地域であったことは間違いないようです。