「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.23
1995年11月号
(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)
活断層地震で本当にコワイ場所はどこ?
阪神淡路大震災(学術的な呼称は兵庫県南部地震)に関する一連の報道のなかで、これまで聞き慣れなかった言葉がひときわ注目を集めました。すなわち「活断層」です。
内陸部の直下型地震が起きたメカニズムは、有馬-高槻構造線と呼ばれる活断層が、長さ約50キロにわたって約2メートル横にずれたことが原因であるというものです。ちょうど導火線の発火点に相当するのが淡路島沖の明石海峡の震源で、横ずれによって放出されたエネルギーがマグニチュード7.2でした。
それまでマスコミで話題になっていたのは、相模湾と駿河湾沖のプレート型の地震を警戒する報道ばかりで、しかもここ数年の間に起きた規模の大きな地震が、すべて海洋上を震源とするプレート型地震であったために活断層が動いてあのような被害となるとは予想外のことだったわけです。
そもそも活断層というのは、地震に伴って地殻のずれた痕跡が地表に露呈した場所を言いますが、ちなみに、いま手元にある「新編・日本の活断層」という本を開くと、日本列島は活断層だらけであることがわかります。これも新聞や雑誌に頻繁に引用されていたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
ご自分のお住まいの地域で、はたして活断層があるのか無いのか、小さな図版では虫めがねを当てたところで判読は困難ですが、おおいに気になるところです。「新編・日本の活断層」ではどうかといえば、1キロがたったの3ミリに縮小されてしまっているために、おおよその位置はわかるものの、どこの町の何丁目かまで特定するのはとても無理です。
しかも、表記されているのが、現在までに確認されたか、あるかもしれないという活断層だけであって、まったく手がかりのつかめていない「潜在活断層」もかなりあるのではないかと推定されています。兵庫県南部地震でも、以前から知られていた有馬-高槻構造線と震度7の激震地域がぴったりと重ならないことから、潜在活断層の存在が取りざたされています。
実は、活断層があるからといって、それがそのまま被害の中心となるわけではないのです。仮に活断層の真上に家屋が建っていたとすれば、活断層のずれに伴って家屋も引きちぎられて全半壊してしまうようなことが起きますが、活断層からわずかに数メートル離れただけで損壊を免れる場合があるのです。今回の地震でも、淡路島の北淡町富島町の民家の庭先を活断層が、幸いなことに断層の真上ではなかったことから家屋は倒壊していません。
神奈川県横須賀市では、市内に3本の活断層が確認されているのですが、そのうち北武断層の真上で住宅開発の申請が出された際に、断層の真上の長さ600メートル、幅50メートルを公園や空き地として利用するという条件で、開発を許可しています。
活断層は、その真上であれば危険であるのは当然として、断層に近いから危険なのではなく、断層が地下深くで動くことによって放出されたエネルギーが、地震波となって伝わった時に振動を増幅しやすい軟弱地盤に自分土地が立地していないかどうかということのほうが、むしろ重要であるような気がします。兵庫県南部地震の「震災の帯」はそのことを教えてくれています。