「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.21
1995年9月号
(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)
地盤自体の耐震性を強める「地盤改良工法」とは?
前回までの震災レポートで指摘したことですが、家屋の被害は、建物の新旧や構法の種別にかかわらず、地盤が軟弱か良好であるかによっても大きな差異が生じています。
たまたま移り住んだ土地や代々相続してきた土地が、仮にも地盤が軟弱であったために、地震で家屋が全半壊したり、場合によっては肉親を失うといった悲劇を招いているのだとすれば、厳粛に事実を受けとめると同時に、すみやかに何らかの対策を講じなくてはなりません。
東海道山陽新幹線の落橋した個所が、軟弱地盤や地形の変化している場所に立地していたという報告はマスコミを通じても伝わってきています。大規模な土木工事の世界では、事が重大なだけに、JRや道路公団がさっそく予算をけいじょうして補強工事にとりかかったりもするのですが、さて戸建て住宅で地盤を強化する具体策は実行に移されているのでしょうか?
構造的に信頼できる壁のことを「耐力壁」と言います。その耐力壁をバランスよく配置したり、2階の床(床剛性)を補強することなど、地震に対して有効とされる構法が提案されており、すでに新しい建物はかなりのレベルでそのような配慮がなされています。しかし一方で、地盤の性状に見合った対策までとなると、工務店や住宅メーカーでは、基礎を剛強にすることを強調するばかりで、地盤自体を補強することには消極的なようです。もとより建築基準法は「地盤自体の耐震性」について大雑把な目安しか提案していません。
軟弱地盤では地震の震動が増幅され、被害を大きくします。その揺れやすい地盤を、ではいったいどのようにして揺れにくくすればよいのでしょう。
端的に言えば、地盤を締め固めてしまうということにつきます。締め固める方法には何種類ものやり方があり、たとえば、ロードローラーのような機械で何度も踏み固めるという素朴な方法から、軟弱地盤の上に土俵のように土を盛って、その重みで地盤を圧縮させる方法などさまざまです。しかし、踏み固めるだけでは深くまで締めるのが困難であったり、土を圧縮させるには数年間に渡って盛り土を放置しなければならないなど、なかなか一筋縄にはいきません(住宅・都市整備公団では、造成の施工期間に余裕があるために、盛り土を放置して地盤が安定するのを待つやり方が主流です)。
ところで、戸建て住宅のように狭小な宅地でも施行可能で、期間も短く、しかも締め固めの効果が期待できる方法で、一般には建物の不同沈下防止のために採用されているのが「地盤改良工法」です。特殊なセメントを混合して、フカフカの柔らかい土でも固めてしまうことができる、ある意味で画期的な工法ですが、大都市圏の一部の住宅メーカーでさかんに使われ出しているものの、まだまだ全国的に普及しているところまでは至っていません。
地盤改良は建物ができ上がってしまってからでは施工できませんが、あらかじめ基礎が載ることになる個所に施しておけば、たとえば国道沿いの交通震動の激しい宅地であっても、地盤改良を施した途端、かなりの程度揺れが小さくなることが分かっています。
すなわち、ユサユサと大きく震動するはずの軟弱地盤を、小刻みな震動に変化させることができるのです。*1
補遺:(*1)この効果は地盤、周辺環境など、施工箇所の条件によって変わります。(ジオテック株式会社)