「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.31

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1996年7月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

地盤のデータベースがまもなくできます?

地盤の性状は、高台や低地などの地形によって、良好であったり軟弱であったりというある程度の傾向を示します。調査データを台地、丘陵地、谷地、海岸平野などの地形ごとに分類すると、その地形に特有の典型的なデータというのが認められ、たとえば高台の台地であれば、火山灰(関東ではローム層)が降り積もった地層がかならず顔を出します。しかも一般に火山灰は住宅地盤としては頼りになる良好な地盤であることが多いので、とりあえず台地に立地する宅地であれば、絶対ではないにしても地盤の点で安心というひとまずの結論を得ることができます。

逆に、低地(前記の谷地や海岸平野など)には、実際のデータのどこを探しても火山灰は見当たらず、出てくるのは決まって水分をたっぷり含んだグジュグジュの土質であって、住宅を建てる際にはなんらかの基礎補強や地盤改良などの対策を講じなければ不安が解消しないというようなことも、数多くの調査を消化しているうちには次第に見えてくるのです。

このように地形と実際の地盤調査の結果を一対一で照会したうえで、地盤の評価を加えたデータを蓄積しておくようなデータベースができたとしたら、ある場所がどのような地形に該当するのかさえ判明すれば、おのずと住宅地盤としてどの程度不安があるのかを見極めるのに非常に役立つということになります。

地盤調査そのものは、近年になって、とくに大都市圏において当たり前のように実施されるようになってきているので、膨大なデータが調査会社ごとに大量にストックされているのは確実なのですが、残念なことに、調査は調査でやりっ放しになっていることが多いので、ただ単にそこの場所がどのようなデータであったのかは分かるとしても、地形から類推して傾向を分析するにはどうも不十分だというのが現状のようです。

地形と地盤は我々が想像するよりもはるかに長い年月をかけて今の形に落ち着いてきたので、ほんの何百年かの間に人為的に改変した土地があったとしても、そこが軟弱の地盤であるのか、あるいは良好なのかということは、さして問題になりません。一説には、1メートルの火山灰が堆積するには約1万年かかるという人もいるくらいで、どのような性状の地盤であるのかは、ほとんど地形の条件によって宿命付けられているというのが実情なのです。

すなわち、調査をして得られてデータというのは、過去何千年か、あるいは何万年にわたる自然の営みを明るみに出す作業であって、いったん得られたデータについては、たかだか数年で古びてしまうようなシロモノではないとことでもあります。地盤はその立地している地形条件によって運命づけられているのですし、地形がどこかに逃げて行ってしまうことは絶対にないのです。

さてそうであれば、地盤調査の結果をむざむざと放置しておくのは、実にもったいない話で、これをきちんと整理保管したとえば住所から検索できるようなデータベースを構築しておけば、たとえ調査を実施していなくても、最寄りの同様な地形のデータを探し出すことによって、そこがどのような地盤であるかを類推することが可能になるというわけです。

いずれ近い将来には(数年先には)、まるで天気予報を電話で聞くように、ある場所の地盤がどうなっているかを聞き出すことができるようなデータベースが構築され、土地を買ったり、住宅を新築する際には、ほんの少しの手間で、アットいう間にどんな地盤なのかということが分かってしまう時代がやってくるに違いないと、地盤関係者はほとんど確信しているのです(実はそのようなデータベースをひそかに作っているので、読者の皆さんは期待して待っていてくださいね)。