「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.3
1994年3月号
(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)
相談内容
埼玉県 大宮市 西畑洋輔さん(仮名・45歳)
「近くにたくさんの学校や公園のある環境のよい土地だと買ったら、基礎工事の時水が湧くようにでてきたんです」
西畑洋輔さんは昨年、100坪の宅地を埼玉県大宮市に買い求めました。
「いろんな土地を見て回り、日当たりや周りの環境、子供の学校のことなど今の僕らに考えられるあらゆることを考えて、この土地を買ったつもりでした。でもひとつ考えもれがあったんですね...」
そう言って西畑さんは長いため息をつきます。土地の登記が終わるとすぐに基礎の工事が始まりました。ところがこの基礎工事の時に、西畑さんの考えてもいなかった問題が持ち上がったのです。
「基礎を造るために土地を掘りますよね。その時に湧くように水が出てきたんです」
基礎工事の職人さんは何度も仕事を中断し、ポンプで水を汲み上げて強制排水しながら土木工事を進めたそうです。
「その時は土を掘ればこういうこともあるのかナ、というくらいの認識だったんです。でも職人さんたちに聞くと、こんなに水が出るのは、ここが低地のせいだというんですね。荒川流域の広大な氾濫低地のせいだというんです」
氾濫低地とは洪水のたびに上流から微細な泥が運ばれてきて、厚く堆積した土地のことです。テニスコートや公園の多い緑に恵まれたこの場所がそんな低地だとはついぞ考えなかった、というのが西畑さんの後悔の原因なのです。
「それだけだったらいいんです。強制排水を続けて工事をしていたら敷地の一部が陥没してしまったんです。汲み上げが急だったためだそうですが、わたしのほうは住んでいたマンションに買い手がついてしまって出る時期は決まっていましたから工事を遅らせるわけにもいかず。応急処置的に埋め戻して建物自体は出来上がったんです。でも築後1年たった今、まずテラスの土間コンクリートが基礎との境目で亀裂を起こして下がりました。次に建物の基礎にも亀裂が入り、ついでブロック塀にも大きな割れ目ができ、このごろではこうして居間にいても床が傾いていることが感覚的にわかるまでになりました」
築1年といえばまだ新築同様。新しい家での暮らしが楽しくてしょうがないころです。ところが西畑家ではだれもが沈みきっているのです。
回答
地盤の良否は地形によって運命づけられているといっても過言ではありません。目で見てすぐに低地とわかる土地もありますが、西畑さんのように周りの環境を買ったつもりでも、その土地全体が低地だったという思わぬ誤算も起こり得ます。地形は下記の表のような項目に分かれますが、その土地がどういう地形か分からないときの、判断の目安をお教えしましょう。
- 地名に水と緑のある文字がついていないか。さんずいのつく漢字や田など、水田や開墾された土地を表す名前がついていないかなど、検討してみてください。
(ex. 新石川、黒須田、池辺、恩田、水沢、鷺沼、中川、新吉田などなど...) - 土地がどのように利用されているか。
新設の公立小中学校や運動場、公園などはおうおうにして軟弱地盤に立地することが多いので要注意です。工場や資材置き場も同様の事がいえます。また水路に隣接する土地もやはり低地と考えられます。逆に神社・仏閣は高台の良好な地盤に建てられていることが多いと思います。 - どのような植物が生えているか。竹林や柳の群生地は水分の豊富な低地であることが多く、ケヤキなどの高い(根の深い)樹木が生えている地盤は良好です。
No. | 地形 | 説明 |
---|---|---|
1 | 台地 | 低地に対する高台で、地盤は比較的良好である。 |
2 | 丘陵地 | |
3 | 台地・丘陵地と台地の境(斜面) | 人工的な地盤改変が激しい。 |
4 | 台地の低位面 | 河川によって運ばれた泥土が堆積する低地で地盤は軟弱である。特に後背湿地は著しく軟弱である。 |
5 | 谷地 | |
6 | 氾濫低地 | |
7 | 後背湿地 | |
8 | 自然堤防 | 分布するのが砂分が多い土であるために強度が見込めない低地。層厚は比較的薄いが軟弱であることが多い。 |
9 | 旧河道 | |
9 | 海岸低地 | |
10 | 砂丘・砂堆 | |
12 | 扇状地 | 浅い深度に砂利層があり地盤は良好。 |
13 | 広域埋立地 | 沼、湖、遠浅の海を埋め立てている。 |
教訓
土地を買うときには低地にご注意!
台地や丘陵の中腹から頂上など比較的良好な高台を狙いましょう。