「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.14
1995年2月号
(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)
相談内容
神奈川県 相模原市 高田敦雄さん(仮名・39歳)
「豪雨の翌日に突然庭先が陥没しました。3ヵ月後には陥没した横に更に穴があき、建物の基礎が見えます。なぜこんなことが起こるのでしょう?」
土地を購入してから空き地のままで放置しておいたという土地に、資金繰りのめどがついたので高田さんは注文建築で木造2階建てを新築しました。築3年です。住んでしばらくはなんともなかったのですが、1年ほど前の豪雨の翌日のこと。突然庭先が陥没していることに気づきました。
「幅1メートル、長さ2メートルくらいの細長い楕円状に50センチほど地盤が下がっていたのです」
そこは応急的に土を入れて元どおり平らにしましたが、さらに3ヵ月後、今度は最初に陥没した場所のすぐ脇で、深さ30センチくらいの穴がぽっかりと空いてしまったというのです。
「でもそれだけじゃないんです。1.5メートルの長さで建物の基礎がむき出しになってしまったのです。心なしか建物全体も傾いているような気がして...」
高田さんは良好な地盤だと言われている土地なだけに、なぜこんなことが起こるのかと首をかしげているのです。
回答
高田さんからご相談があり、さっそく地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験)を実施すると同時に、実況検分に伺うことになりました。陥没した付近で2ヵ所と、敷地の対角方向で2ヵ所の調査を実施しました。
各測点のデータを比較したところ、異常の起きていない場所には軟弱層は見当たらず、関東ローム層と言われる良好な地盤が連続していることが確認されたのですが、問題の陥没個所では、地表から2.5メートルまでが非常に弱い値で、その途中にはほとんど空洞化しているような層があるらしいことが判明しました。軟弱層の下部には先のローム層が同様に分布しています。
スウェーデン式サウンディング試験では土質までを特定することはできないため、実際に土を掘ってみたところ、中からは大量の木くずのほかにビニール袋、はりがね、空きカンなどの生活ゴミが出てきました。土そのものは、俗に黒ボクと呼ばれているこげ茶色の土で、ふかふかしているので掘るのが容易な土です。
地盤が軟弱か否かは、一般的には地形によって支配されており、水の集まりやすい低地ほど軟弱というのが通例です。では高田さんの土地がどうかと言えば、相模原台地と呼ばれる平坦な高台の地形にあって、近隣に起伏はなく、水路沿いの谷地も存在していません。高田さんがおっしゃるように、弊社の近隣データによっても、軟弱なエリアには分類されておらず、地盤は悪くない地域です。
ところがこのような台地やなだらかな丘陵地に限って、実は地盤の陥没事故が多いのです。理由はいくつか考えられるのですが、最も多い要因としては、造成によって宅地かされる以前、付近が雑木林であったために、開発に伴って切り倒された草木を、どこかよその場所で処分するのではなく、その場に穴を掘って埋めてしまうという安易な造成が行われただろうということです。
植物は時間とともに自然に腐敗してかたちがなくなっていき、場合によっては空洞化します。すなわち、大量の木くずが出てきたのは、埋めたてはずの枝や幹がまだ腐りきっていない状態だったのだろうと推定されるのです。
一方、地盤が軟弱であるような低地では、もともと雑木林は繁茂しません。湿潤であるために高木は育ちにくいのです。地盤自体は決して悪くないために、地場の工務店などでも、まさか空洞があるなどとは思いもよらず、標準基礎ですましてしまったのでしょう。
植栽は地上から上の部分だけを切り倒しても根が地中に残っていると、同じようにいずれは腐って空洞化します。昔は一面草原だったような場所でも、ススキやカヤを埋めて事故につながった事例もあります。
開発から取り残されて、長い間にわたって市街化調整区域であったような場所で、地目が雑種地となっているような土地、とくに斜面の窪み(沢筋)では、産業廃棄物やゴミの投棄場所に指定されていた場所があるので注意が必要です。
教訓
地盤がよいとされる台地やなだらかな丘陵地であっても要注意。
木を切って安易に埋め戻された場所があると、空洞化しています。