「あなたの土地は大丈夫？」知らないと損をする地盤のこと vol.8
1994年8月号
（解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室）
相談内容
千葉県 浦安市 浜田英次さん（仮名・４１歳）
「海の近くのびやかな環境が気にいて土地を買おうと思ったら義父に反対されました。埋立地は地盤が悪いのではないかって。業者はべた基礎にしたら大丈夫だと言います。でも本当なのでしょうか」
５年前、浜田さんは美しいホテルが立ち並び、駅前も美しく整備された新浦安駅から歩いて１０分ほどのマンションを買い求め、都内から移り住みました。都心にも近く、通勤時間はドアツードアでで５０分という便利さ。マンションの購入価格も妥当なものでした。
「でもね、何よりも気にいったのは、東京ディズニーランドに近く海にも近いこの土地柄が、なんとなくのびやかでせこせこしていない点だったんです」
たしかにちょっと歩けばステキな調度の置いてあるおしゃれなホテルでお茶が飲め、夏にはディズニーランドの花火が望めるという環境はどこか非日常的でリゾート気分を味わえるところがあります。
「だから最近分譲売り出しのチラシを見たときにはすぐ買いたいと思ったんですが、女房のおやじに言われたんですね。このあたりで土地を買おうと思うなら相当慎重に地盤のことを調べなければダメだって。すぐそばの東京湾岸のホテル群が地盤沈下のため修復工事をしたという記事を新聞で読んだことはないのっかて」
かつては海だった埋立地であるこのとを知っていはいても全然気にしていなかった浜田さんは、土地を買うという一生の一大事にあたって義父から相当説教されたらしいのです。で、あわてて業者に問い合わせると、「地盤が悪いまま売り出したりするはずがありません。それほど心配ならべた基礎にしてたてたらいいでしょう」という返事。
「けど、べた基礎なんて聞くのも初めてだったしね、べた基礎ならたとえ地盤が悪くても安心なのかわからないし、第一べた基礎ににしたら、と業者が勧めるということはやっぱり地盤がよくないのかなあと思ったり。どこに相談にいったらよいのかもわからないし、土地を買うのって難しいなって、このごろ憂鬱なんです」
都内の自分の敷地に二世帯住宅を建てないかとういお義父さんからの暗黙の申し出もあります。けれどこの地を離れたくない浜田さんとしては、義父にも安心だと説明できる地盤の分譲地を買い、早く一戸建てを建てたいというのが本音なのです。
回答
「べた基礎」というのは、建物の下部全面に鉄筋コンクリートの板状の基礎が設置される基礎のことで、たてもの下部の主要な部分にのみ帯状に鉄筋コンクリートが設置される「布基礎」と区別されて使われます。すなわち「べた基礎」が面で建物を支えるのに対し、「布基礎」は線で荷重を支えるわけです。ですからべた基礎は、縦と横に網の目に鉄筋が入るだけに、布基礎よりも頑丈な基礎といってよく、たわみが出にくいという構造上の特徴から、発生する不ぞろいの沈下（不同沈下という）を均等化する作用を期待できる基礎なのです。
確かに不同沈下防止策として非常に有効なので、軟弱地盤で多用されているべた基礎ですが、だからといってべた基礎あれば万全というわけではありません。1.基礎そのものの自重が重たくなり、それだけ軟弱層を刺激してしまうこと、2.地盤のバランスが悪いところではかえって不同沈下を招きかねないなどデメリットがあり、採用する際には慎重な注意が必要です。
たとえば、建物のごく一部が地下車庫などの構造物にのってしまったり、盛り土地盤に建築廃材などの異物が混入していると、べた基礎の直下にテコの支点が生じて、せっかくべた基礎が沈下を均等化しようとしても、その作用がうまく働かないということにもなりかねません。
今回のご相談の地域は、おそらく東京ディズニーランドに隣接した広大な海浜の埋め立て地の一画ではないかと推測されるのですが、精度良くきっちりと締め固めをしてある街区がある反面、廃材が無造作に放り込まれているアンバランスな地盤である街区もあり、一概に判別がつかないことがよくあります。それを「地盤が心配ならばべた基礎でよい」という業者は確かに早計にすぎます。ましてべた基礎にしたときのコストは決して安くはないのです。
べた基礎を採用してよいかどうかは、周囲が広い平坦地で起伏がなく、地層が変化していないことに確信が持てるか、盛り土に異物が入っていないか、あるいは地盤調査の結果からバランスのよい地盤であることが事前に了解されているか、などといった前提条件を満足させる必要があるのです。
心配ならべた基礎で、ではなく、疑わしきは地盤調査を！お勧めします。
教訓
べた基礎にしたからといって、地盤沈下が防げるかと言えば、決してそうとは言い切れないのです。