「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.25
1996年1月号
(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)
軟弱地盤は地価の評価額が下がります。
兵庫県南部地震では、不動産の評価にも多大な影響がでました。
たとば、被害の程度が大きかった神戸市三宮周辺では「路線価」が24.5%も下落しています。国税庁では、納税者の負担を軽減する特別措置として「調整率」を設け、さらに評価額を切り下げたために、土地取引の実勢価格が下がるのは必至の情勢です。
この措置によって、土地を相続する場合の救済効果は顕著ですが、逆に、今までの所有地を手放してよその土地へ移転しようとする被災者にとっては、転売価格の下落は致命的な打撃にもなりかねません。
「路線価」も「調整率」も被災の程度に応じて地区ごとに細かく規定されており、これほど大きな範囲で地盤災害が土地の評価を左右したのは我が国では初めてと言っていいことです。
一般に地価の価格形成にかかわる要因としては、1.自然的要因、2.社会的・経済的要因、3.行政的要因があり、それがさらに(A)地域的要因と(B)個別的要因を加味されることによって価格が決定されますが、自然的要因として分類されていた地盤の良否については、これまでの不動産鑑定において問題にされてこなかったのが現実でした。
以前から「急傾斜地崩壊危険区域」の指定を受けた急な崖地では、建築確認申請の際に、基礎の形状などについて厳密な指導を役所から受けたり、そもそも構造物を建ててはいけない場所などもあって、地すべりの危険性が評価額に反映されることもありましたが、これは現地で見れば比較的わかりやすい危険性です。
ところが兵庫県南部地震では、震源域とは別に「震災の帯」と言われる激震地帯が出現するに至って、地形や地盤の状態が家屋の倒壊率に影響していたらしいことが浮かび上がってきたことから、俄然、地盤の性状がクローズアップされることにもなったわけです。
すなわち、国土庁では阪神・淡路大震災の被災後の不動産鑑定基準について、「留意すべき事項」として次のような通達を出しています。
地盤・地質の状態として、「この項目は、被災したことにより地質・地盤等の状態の良否に対する意識が強まっていることから、周辺の木造家屋等の倒壊率、液状化の有無等を考慮して適用するものとする」という記載がそれです。
見ただけでは分からないために、平静であれば無視されがちであった地盤の状態をチェックする鑑定表にも、被災による影響があったと考えられる土地・家屋について、やや軟弱、軟弱、著しく軟弱という3段階で格差がつけられ、地盤の悪い地域についてはそれだけ地価が下がるのが適切であるとしています。
そもそも地震の被害が大きくなる地域というのは、地盤が軟弱であるため建物が傾いてしまう「不同沈下」も起きやすい場所です。地盤が建物の重みを支えきれない場合には、地盤改良や杭基礎などで補強する必要があるわけですが、そのための工事費は、本来、地価に反映されて工事費相当分だけ安く取引きされるのが妥当なはずです。仮に同じ面積でしかも同じ価格の二つの土地でありながら、地盤が良好という場所と、著しく軟弱という場所では、沈下対策と地震対策について住宅で数百万円、ビルならば数千万円の開きがでてもおかしくないのです。