「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.4

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1994年4月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

相談内容

千葉県 千葉市 吉池輝雄さん(仮名・40歳)


総棟数40棟の住宅団地の建売住宅をかいました。買って2年目、床が傾いてボールが転がるようになったのです...。


2年前、約40棟の住宅団地の建売住宅の1棟を買った吉池輝雄さんは、このところ近所の人たちとの集会のために費やす時間が多くなっています。

「仕事が忙しいから、本来ならこんな集まりに時間をとられてなんかいられないんですけどね。でも今回ばかりはしようがないんですよ...」

とため息をつきます。というのも、住んでいる家自体が、今足元から瓦解しようとしているんですから。

「うちだけじゃないんです。同じ住宅団地の40棟のうち10棟で床が傾斜してきたんです。たった2年ですよ。たった2年で基礎は亀裂するわ、建具は開かなくなるわ、もう大変なんですから」

最初に言い出したのは、床をボールがひとりでに転がりだした家でした。おかしいと言い出して、近所の家を調べていたら、基礎に亀裂が入っている家も排水がスムーズにいかない家もみな原因は同じだとわかったのです。

「一方向に4㎝くらい地盤が沈下していたのです」

びっくりした住民は集会を開き、詳細な地盤調査と家屋の点検を住宅団地側に申し入れました。その結果わかったことは、今後も沈下が進行し、このまま放置しておけば、最終的な沈下量は150㎜を超えるだろうという予想です。

「なぜ我々10棟だけなのかと聞いたら10棟だけが台地と台地の間の細い谷筋の、軟弱地盤にあったからだということです」

吉池さんたち住人の強い要望で内外装の修復と沈下修正工事をすることになりました。沈下を起こした一角では、転倒する危険を避けるためにブロック塀がすべて取り払われ、どの家もなんとなく奇妙な外観になっています。

「本当に気が重いことですよ...」

吉池さんはもう一度深いため息をつくのでした。

回答

建売分譲住宅は購入を検討する時点では既に何もかもでき上がって、地盤が良いのか悪いのか、下見をしたくらいではわかりません。分譲業者や仲介業者に尋ねても、売買に不利になるようなことを言うはずもなく、その業者を信頼して買うしかありません。

けれどもこの信頼にはなんの根拠もないわけで、住宅という高い買い物をするわけですから、せめて地盤調査が行われていたのかどうかだけでも確認し、できれば調査の報告書の写しを請求するのがよいと思います。

ある程度まとまった着工棟数の造成地の場合、事前に地盤調査が行われないはずはなく、もし行われていないとすれば、その業者はかなりいい加減だといえます。

地盤データを首尾よく入手しても、それを素人が理解できるだろうかという心配もあります。そんな時は専門の調査会社に郵送するかFAXして検討してもらえばよいでしょう。

吉池さんの地盤の場合は、調べた結果、もともとは水田のあった低地でしたから、低湿地に繁茂する草やコケが倒れて積み重なり、多量に水分を含んだまま変化した腐植土と呼ばれる土が軟弱地盤を構成していることがわかりました。被害にあわなかった家屋は台地に分布しているか、腐植土が分布していない地盤に立っていたことがわかり、そう報告しています。


教訓

建売住宅を買う場合は、地盤の調査がしてあるかどうかを確かめ、できればその結果を見せてもらうよう請求しましょう。