栃木県の地形・地盤
地形
栃木県は、東北地方より延長する山岳部と関東平野の北縁が接する地域に位置し、県東西に発達する二つの山地帯と県央部を南北に占める平野部の大きく3つの地形区からなる。県央平野部は鬼怒川地溝帯の上に成り立ち、主に丘陵地、台地、低地で構成される。
山地の分布は、県東縁に八溝山地が標高1,000m以下の低山地を展開するほか、県北西部および西部一帯では奥羽山脈南端部が標高2,000m級を含む大起伏の山地を形成し、那須・高原・日光の3火山群を内包する。県北の那須岳・高原山、県西の男体山はこれら火山群の代表的な火山である。また、県南西部には足尾山地が分布する。山地北部は険しい山容を見せるが、南部は標高を減じて隆起準平原*1へと変化し、県南縁の渡良瀬川や周辺水系の著しい開析を経て、分離丘陵*2の様相を呈している。
丘陵地は、県央平野の北部および中部に分布し、那珂川以北の那須岳山麓丘陵、鬼怒川北方の高原山山麓丘陵などがいずれも南東方向へなだらかな傾斜面を形成する。高原山麓丘陵は鬼怒川に沿って益子付近にまで及んでいる。
台地は、主に県央平野の南部に見られ、渡良瀬川支流や鬼怒川の南流に沿って形成された低地と砂礫質の河岸段丘および帯状に細分化されたローム質台地とが南北に平行に分布している。
なお、建築石材として知られる【大谷石】は、緑色凝灰岩と言い、宇都宮市北西部の丘陵を構成する基盤岩の一つ。また、園芸用土として知られる【鹿沼土】は、鹿沼地域に産出する軽石層で、ローム層の比較的上位に互層に堆積している。
注釈
- 山岳形成(造山運動)の終末期に生じる平低な準平原が、全体または部分的に隆起した地形。一般に、隆起面は開析が著しい。
- 山地や丘陵の裾野に隣接する平野や低地に見られる地形的な高まりを言う。背後の山地や丘陵地と同じ基盤をなす場合は、山地・丘陵地の陥落地塊あるいは山脚部の埋積地形などからなる。
地盤
山地
各種岩盤類が基盤を構成する岩石系山地の様相を呈し、岩盤由来の風化土砂のほか、黒ボク土(有機質土)や火山噴出物などが被覆する。一方、火山地では、主に火山活動由来の火成岩類が基盤となり、火砕流・泥流堆積物などが広く分布する
住宅地盤としての利用は、傾斜地が想定されるため、自然地盤と人工的な造成地盤とのバランスなどに配慮した慎重な対応が必要となる。
丘陵地
各種岩盤類を基盤とする山地の山麓部を成し、砂礫や泥流堆積物により形成された地形面(洪積台地,扇状地など)の上位に、火山噴出物や火山灰質のロームが堆積して、起伏の少ない緩斜面を形成する。
一般に、住宅地盤としては良好と考えられるが、地表付近を被覆する黒ボク土(有機質土)の層厚や軽石層の分布状態によっては、十分な注意を要する。
台地
砂礫や泥流堆積物により形成された地形面(洪積台地,扇状地など)の上位に、火山噴出物や火山灰質のロームが厚く分布する。
一般に、住宅地盤としては良好と考えられるが、地表付近を被覆する黒ボク土(有機質土)の層厚や軽石層の分布状態によっては、十分な注意を要する。
低地
諸河川(鬼怒川、那珂川、渡良瀬川など)とその支流に沿って形成された砂礫台地(低位段丘面)および谷底低地、氾濫原など。
一般に、上流域では粗礫や砂が浅い深度から分布することが多いが、中~下流域では山麓丘陵や台地が開析されることで生じる砂質土や粘性土、砂礫などが互層状に堆積して、地盤上位に軟弱層が形成される傾向がみられる。
軟弱層の層厚や状態は、各地形の形成年代や地質構成により異なるため、住宅地盤を想定すると、地盤状態を十分に把握することが必須であり、基礎形式の選定は慎重に行う必要がある。
- 参考文献
- 「縮尺20万分の1 土地分類図付属資料(栃木県)」(発行:財団法人日本地図センター)
- 「日曜の地学9 栃木の地質をめぐって 下野地学会編」(発行:築地書館)
- 「日本の地質3 関東地方」(発行:共立出版株式会社)