鹿児島県の地形・地盤
地形
鹿児島県は九州南端部(本土地域)と南西海上に点在する多くの離島より成り立ち、総延長600kmに及ぶ範囲を内包する。
地質学的特色として、県下北部にて日本列島の弧状構造である本州弧と琉球弧とが会合しているために、本土地域と種子島・屋久島では本州弧的な地質構造を、奄美以南では沖縄類似の琉球弧的な構造を備える。また、熊本県下の阿蘇を基点とする霧島火山帯の延長として、霧島・桜島・薩摩半島突端の開聞岳(かいもんだけ)、火山性離島に至る数多くの活火山、休火山が存在する。
地形学的には、本土面積の50%強、標高およそ300m以下を厚く覆うシラスと、比高100mにも達するシラス台地の分布が最大の特徴であり、シラスの総堆積量は2,000億トン超とも見積もられている。
シラスの主体は、およそ2万4-5千年前に鹿児島湾湾奥に生じた姶良(あいら)火山(姶良カルデラ*1)を起源とする軽石質、火山灰質の火砕流堆積物と推定されており、桜島は姶良カルデラの外輪火山である。県下にはこの姶良のほか、霧島火山群を外輪の南縁とする加久藤(かくとう)カルデラ、鹿児島湾湾口に位置する阿多(あた)カルデラ、硫黄島と竹島を外輪とする鬼海(きかい)カルデラなどが知られ、著しい火山活動を物語っている。
県内の地形は、火山地を含む山地、丘陵地、台地・段丘面、低地に大別される。
山地は北部の出水山地、大隈半島の高隅山地・肝属(きもつき)山地のほか、薩摩半島一帯と屋久島・甑列島・奄美大島・徳之島などの一部が属する。なお、屋久島は九州最高峰を抱える大起伏の山地である(宮之浦岳 標高1935m)。
丘陵地は形成は本土では非常に乏しく、種子島と屋久島周縁部に発達する。
シラス台地は、鹿児島湾北方(姶良郡域)、鹿児島市以西(日置郡域)、薩摩半島南部域、大隅半島北部(曽於郡域)、同半島中部(肝属郡域)に発達し、薩摩半島南部域と大隈半島中部では火砕流溶結物からなる岩石台地もみられる。シラス台地上面部は通常、平坦面を成すが、大隈半島中部と薩摩半島南部以外では、河川や雨水による開析が進み、台地平坦面は失われているところが多い。これら河谷と河川流域の平野部および沿岸平野部が低地をなす。
注釈
- スペイン語で「釜の意」。火口周辺の崩壊、陥没によってできた大規模な円形または馬蹄形の窪地。直径2kmから数十kmに及ぶ。
地盤
山地
各種岩盤類などで形成された基盤の上位に、火山灰に由来する黒ボク土や森林性有機質土が堆積する。低山地や山麓部ではシラスの堆積をはじめ、凝固火山礫層(通称コラ)や固結軽石層(通称ボラ)などの堆積がみられる。
宅地地盤としての性状は、形成年代や発達過程(土種、層厚、成層状態)により異なる。一般に、黒ボク土や森林性有機質土が厚い場合、固結土層が存在する場合、傾斜地を造成する場合には、慎重な基礎選定を要する。
丘陵地
山地に比べ起伏量の小さい部分。基盤構成、表層地質とも山地に準じる。
宅地利用に際しては、造成による地盤状態の改変を考慮し、自然地盤の状態と人工的な盛土部分とのバランスに配慮した慎重な対応が必要である。
シラス台地
シラス台地は、軽石質・火山ガラス質を含有する火山灰砂が数十メートル堆積した構造を成し、一般に表層部を霧島、桜島、開聞岳由来の新期火山灰やローム、固結軽石(通称ボラ)、凝固火山礫(通称コラ)などが被覆する。シラス下層には厚さ数メートル程度の降下軽石層が分布することが多いが、直接基盤岩上に堆積している場合もある。シラス台地周囲は数十メートルもの垂直な急崖部を成し、自然状態では極めて自立性が高いが、流水の侵食に対して脆弱であり、特異なガリ侵食崩壊による災害も発生している。また、乱したシラスは全く強度を見込めないため、盛土利用には十分な注意が必要である。
したがって、住宅利用に際しては、シラスの特殊性を十分に考慮した上で、地盤状態を見極めることが望まれる。特に土質試験や土質調査については、普通の土と同様の方法をそのまま適用できないことがあるので、注意を要する。
低地
河川流域に形成された開析谷や河口部、沿岸域の平野部。いわゆる沖積層を成す。
沿岸部においても海成の粘性土をほとんど含まず、ほぼ火山性の砂や砂礫、砂質シルトなどを主体に構成される特色を持つ。沖積シラスおよび二次堆積シラスの分布地域では軽石礫、火山ガラスを含むことが多い。
一般に軟弱地盤を形成することが多いため、住宅利用を考えた場合、基礎形式の選定は特に慎重に行なう必要がある。
- 参考文献
- 「縮尺20万分の1 土地分類図付属資料(鹿児島県)」(発行:財団法人 日本地図センター)
- 「地質と調査 通巻第59号/1994第1号―連載11 鹿児島県の地盤―」(発行:株式会社土木春秋社)
- 「日本の地質9 九州地方」(発行:共立出版株式会社)
- 「土質基礎工学ライブラリー10 日本の特殊土」(発行:社団法人土質工学会)