広島県の地形・地盤
地形
広島県は中国地方の骨格である中国山地の南面、ほぼ中央付近を県域とする。
地形的な最大の特徴は、北東-南西方向に延長する中国山地と平行に形成された階段状地形*1であり、「高位面」として、道後山・恐羅漢山・冠山などの山頂脊梁部(高度1000-1300m)、「中位面」として、世羅台地を含む小起伏、緩斜面の吉備高原面(高度400-600m)、「低位面」として、山麓平坦部の瀬戸内面(高度200m以下)の3つに大別され、いずれも隆起準平原の様相を呈している。
各面の境界付近は勾配が急変し、断層の発達と浸食作用などの影響により、渓谷や滝を含む断層谷の発達が著しい。
階段状地形が瀬戸内海沿岸部にまで近接するため、平野部は河川流域と河口付近のみに限定される。
地質的特徴としては、花崗岩類と花崗岩風化産物であるマサ(真砂)の分布が上げられる。
前記した階段状地形や断層谷の形成には、風化・侵食の影響を受けやすい花崗岩の性質が深く関わっており、特に吉備高原面の小起伏地から瀬戸内面の平坦地では、花崗岩の深層風化(マサ化*2)の産物として、マサ(真砂)が表土の下、最大で数十mもの層厚で、基盤岩を覆っていることが分かっている。
注釈
- 一般に山岳形成の過程(造山運動)で生じる隆起地表面は、長期の侵食作用を経て、徐々に平坦な準平原へと移行するが、準平原が成立する前に再び隆起が始まると、次の侵食輪廻はその隆起面を基準に進行していくことになる。このように、侵食を上回る速度で隆起が繰返された場合に、階段状の侵食平坦面が生じると考えられている。
- マサ(真砂)とは、花崗岩自体の風化・変質作用により生じた産物で、いわゆる堆積地質とは異なる。花崗岩系風化残積土とも言う。土としての凝集力や侵食抵抗力が極めて小さく、脆いため、造成しやすいが、反面、土砂災害などの原因となりやすく、注意を要する土質工学上の特殊土。
地盤
山地(階段状地形高位から低位までを広く山地とした)
各種岩盤類などで形成された基盤の上位に、火山灰に由来する黒ボク土や森林性有機質土のほか、侵食作用により流出した二次的土砂が堆積する。
宅地地盤としての性状は、形成年代や発達過程(土種、層厚、成層状態)により異なるが、一般に、黒ボク土や森林性有機質土が厚い場合、固結土層が存在する場合、傾斜地やマサの分布域を造成する場合には、慎重な基礎選定が必要となる。
平野部が乏しいため、宅地開発が山麓平坦部から緩斜面、山間丘陵などにも及んでおり、地盤状態だけでなく、土砂災害危険区域*3についても知っておくことが望まれる。
注釈
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土石流危険渓流、急傾斜地崩壊危険箇所として指定される。広島県の指定箇所数はいずれも全国一位。指定箇所は以下のサイトにて公表されている。
広島県土砂災害マップ http://www.sabo.pref.hiroshima.jp/karte/
低地
河川流域や河口の平野部で、いわゆる沖積層を成す。
砂や砂礫、シルトなどを主体に構成され、一般に軟弱地盤を形成することが多く、住宅利用を考えた場合、基礎形式の選定は特に慎重に行なう必要がある。
- 参考文献
- 「縮尺20万分の1 土地分類図付属資料(広島県)」(発行:財団法人 日本地図センター)
- 「日本の地質7 中国地方」(発行:共立出版株式会社)
- 「日曜の地学7 広島の地質をめぐって」増補版(発行:築地書館)
- 「土質基礎工学ライブラリー10 日本の特殊土」(発行:社団法人土質工学会)