住宅地盤相談室に寄せられたご相談内容 No.32
相談内容
建売住宅を購入し新居での生活をはじめましたが、最近になって近所の人から、この一帯が、かつて沼地で、ひどい軟弱地盤であることを知りました。不動産会社はドブのようなものがあったとしか説明していません(それも、このことは敷地が道路に直接接していない理由を問いただして初めて不動産屋が明らかにした事実です)。
しかし、ドブと沼では大違いです。(一給与生活者にとっては)大金を払って買うものですから、必要な情報を買い主に与えないのは詐欺行為であると思っています。
この地域は、今も掘ると、腐った葭が出てくるし、何年か前に下水工事でボーリングをしたとき、道路沿いの多くの家が傾いて、直したそうです。私の家の隣の家はその後ふたたび傾きはじめているそうです。
私の家はベタ基礎を持つ、1Fコンクリートの木造3階建で、建主はしっかり造った(自分の妻が神戸出身だからという理由づけで)と言っていますが、そのような軟弱地盤であることを知っていたら、買わなかったでしょう。
近所の複数の人は、私の家の基礎が造られているとき、水が湧き出て水浸しになり、その処置に大分時間がかかり、工期が遅れているらしかったと言ています。
将来、家が傾かないかどうか、引っ越しすべきかどうか、心配です。住み続けて傾いたときに、売主や不動産屋に保証をしてもらえるのかどいうかという点も知りたいと思っています。
回答
- かつて沼地であったかどうかは旧版の地形図を参照してみないと分かりませんが、「土地条件図」で検索すると「谷地」に立地しています。
- 同じ谷に分布する地盤調査の結果によれば、軟弱層の厚さは6m程度、とくに軟弱な地盤は地表から-4m付近までに堆積しているらしいことが分かります。
- さて、このような軟弱地盤について、不動産売買に伴う重要事項の説明の義務があるかと言えば、法的には過失を問うことが難しく、また、慣例としても行われていないようです。
- つい最近になって、日本不動産鑑定協会から「鑑定に際して留意すべき事項」として指針のようなものが提示され、地盤沈下の可能性がある場合に、市場性が劣ることを評価に反映させるようにと、ようやく記載されるまでになっていますが、現実にはこれからなのです。
- ベタ基礎は、建物にとって大敵とも言うべき不同沈下を防止する基礎としては、通常の布基礎よりも有効ですが、ベタ基礎の下部に均質に軟弱地盤が分布していなければならず、軟弱層の層厚が急変したり、瓦礫混じりの盛土が施されている地盤で、基礎がその瓦礫に接触している場合には、効果が期待できないこともあります。
- ベタ基礎の採用の可否を判断する材料は、地盤調査のデータであって、何となく大丈夫だろうという「勘」ではありません。
- 保証に関しては、売買契約書にうたわれている年限を早急に確認することをお勧めします。民法上は5年までの訴追が可能ですが、実際の契約書の方が優先されます。
- 不同沈下は築後数年を経てはじめて顕在化するので、不具合が露見したときに既に保証の年限が終了している場合には無料修繕を求めることは困難です。
- 2000年の初夏に施行予定の「住宅品質確保促進法」では、「瑕疵担保責任10年保証義務化」が盛り込まれており、これもこれからなのですが、「(仮称)住宅紛争処理機構」も新設される予定なので、実害が発生した場合には申し立てを行うことができるはずです。
【 お願い 】
ご相談の事案に対する回答は、限られた情報によって推測される所見であることをご承知ください。
したがって、この回答を直接的に交渉や請求の手段とすることはご遠慮くださるようお願い申し上げます。