住宅地盤相談室に寄せられたご相談内容 No.35
相談内容 其の一
建売住宅の契約をしましたが,地盤が不安なため,業者から地盤および基礎に関する念書を取ろうと思います。どんな文面にしておけば,万一不具合が起きた場合にスムーズに保証させることが出きるでしょうか。
地盤と建物の不具合の因果関係を業者に認めさせることが難しいように思うのですが。
回答 其の一
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建物に不具合が発生する時に考えられる原因はおよそ次の3つです。
- 造作のずさんさ
- 十分に乾燥させていない材料が、乾燥するにしたがって変形してくる
- 軟弱地盤上での不同沈下
- 覚書きには、どのような部位にどの程度の不具合が発生した時に、どのような修復をするかを、何年にわたって保証するかが明示されていなくてはなりません。
- 不同沈下は時間の経過とともに進行していきます。 通例、数年後に土間コンや基礎に亀裂が入り、さらに数年後に建て付けが狂ってドアや引き戸の開閉が困難になってきますが、年月を経るにつれて亀裂が広がってくれば、不同沈下の疑いがあります。
- 基礎の上端部のレベル(水平性)を定期的に定点観測し、高さが不揃いで、その差異が年々増大していくようであれば、修復を求める根拠になります。
- 距離10mに対して、不同沈下の高さの差が30mmを超えると基礎に亀裂が入り、50mmを超えると建て付け不良が出てくると言われています。
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詳細は以下の文献を参照してください。
「小規模建築物基礎設計の手引き」日本建築学会編集・発行
「欠陥住宅被害救済の手引き」日弁連土地住宅部会編集・民事法研究会発行
相談内容 其の二
ご回答の中にある”基礎の上端部のレベルを定点観測する”には,どのようにすれば良いのでしょうか。
建物外周部(4隅)で地盤面から基礎上端部までの距離をメジャーで計測するくらいで良いのでしょうか。
基礎上端部とは基礎のコンクリート上にある木材の底面までの寸法でしょうか。
回答 其の二
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レベルの測定は個人では難しいかもしれません。
基礎の上端部とは、外壁が下がりきった木材(=土台)の底面で、基礎の最上端部の高さのことですが、単に地面からの高さをメジャーで計測するのではありません。 - 最寄りの道路上のマンホールなど、ちょとやそっとでは動かない堅固な構造物を原点(±0)として、専用の器材でミリ単位で測定をするのです。
- 目に見えるような実害(基礎の亀裂など)が出た時点でそのような作業を建築会社にやってもらえるかどうか、です。
- 誠意のある建築会社であれば、定期点検を兼ねて即応してくれるはずです。
相談内容 其の三
建売住宅の地盤に関する念書を業者から出してもらうことにしたのですが,業者側は保証範囲は”傾斜5mm/1000mm,10年間”と行って来ています。この保証範囲は妥当な物でしょうか?。
私としては”傾斜3mm/1000mm”を希望しているのですが,万一不動沈下が発生した場合,傾斜3mm/1000mmで不動沈下が収まらずいずれは傾斜5mm/1000mm以上になるものでしょうか?
それならば傾斜5mm/1000mmを越えた段階で保証要求(3mmから5mmの間は我慢して)できるのですが?
回答 其の三
- どこの部位で5/1,000なのでしょうか。
- 建設省が策定中の瑕疵推定基準では床の傾斜で6/1,000になりそうです。
- 基礎の傾斜の瑕疵推定基準は不明で、策定されるかどうかも分かりません。
- 軟弱地盤が厚ければ、不同沈下は進行し続け、3/1,000を超えることもあります。
【 お願い 】
ご相談の事案に対する回答は、限られた情報によって推測される所見であることをご承知ください。
したがって、この回答を直接的に交渉や請求の手段とすることはご遠慮くださるようお願い申し上げます。