住宅地盤相談室に寄せられたご相談内容 No.75
相談内容
<事実の概要>
自己所有地(木造二階建の住居兼店舗あり)に隣接するビル(1966年頃当初2階建ビルとして建築、その後2年余りしてその上に4階分を増築している)との土地境界付近で地盤沈下が発生している。
この地域自体、昔のお城のお堀跡で、近くには河川もあり決して地盤の強い地域とは思われないが、周辺で自然地盤沈下による被害が発生しているとは聞いたことがない。
上記ビル建設当初、基礎工事の段階においてかなりの水と土砂が流れだし、自己所有地においても陥没が発生した。その時点では、土地境界付近に、ビル建設会社がH鋼を複数入れると共に、自己所有地の陥没・建物損壊部分の復旧措置をした。
その後も徐々にではあるが地盤沈下は認められたが、自己所有建物に影響の出るものではなかった。ところが、1993年頃、土地境界付近のビル側敷地内において、陥没によるとみられるコンクリート地面の多数の亀裂が生じ、ビル所有者は、そのコンクリートを剥がし、新たに土砂を入れる等の一応の復旧工事をした。
しかし、その頃を期に、自己所有地にも亀裂が生じたり、同建物についても雨漏り、シャッターの開閉困難等、その影響と思われる事実が発生しはじめた。そして、ビル周囲のいぬばしり(?)においても多数の亀裂が生じているのが現状であるが、ビル所有者は、その影響を否定している。
<質問内容>
このような場合において、自己所有地の地盤調査をすることに何かメリットはあるのでしょうか。
あるのであれば、どのような調査方法があり、おおよその費用はどれくらいかかるものなのか、また、得られた資料からは一般的にどのようなことがいえる可能性があるのか。
回答
- 起こった現象から原因を特定していくのは、単独の物件ですら非常に難しいことなので、隣接する建物同士の関係を明らかにするのはさらに困難なことです。
- 単独の建物が沈下したかどうかを確認するには、建物の四隅で地盤調査を実施すると同時に、基礎の上端をレベル測量し、地盤の程度と建物の傾斜に因果関係があるかどうかを推測するとともに、レベル測量を半年に1度くらいの頻度で2~3回繰り返して、沈下量が前回に比べ増減したかを見ることで、数字が大きくなった場合には、沈下がなおも進行中であり、数字が小さくなれば沈下が終息に向かっていると判断するのです。
- 隣接建物が増築される前後での不具合発生の記録(日誌と写真)や沈下量の変化が記録されていれば有力な傍証にはなりますが、ある程度沈下が進行してしまった後では、地盤調査やレベル測量をやって何が証明できるかは、地盤沈下が発生してもおかしくない程度の軟弱地盤であるかどうかということであって、隣接建物の影響かどうかは不明のままです。
- 一般に、軟弱地盤で隣地に重量のある建物が建てば、重量構造物側で沈下が大きくなるのは当然で、そのような場所では、重量構造物は硬い地盤に到達する杭基礎などで支持させる必要があるはずです。杭で支持されていれば他の建物に影響を与えないと考えられるので、その重量構造物が立地している地盤の程度に見合って、建物の沈下対策が講じられているかどうかを第三者によって鑑定してもらうのが近道ではないでしょうか。
【 お願い 】
ご相談の事案に対する回答は、限られた情報によって推測される所見であることをご承知ください。
したがって、この回答を直接的に交渉や請求の手段とすることはご遠慮くださるようお願い申し上げます。