住宅地盤相談室に寄せられたご相談内容 No.41
相談内容
埼玉県大宮市の土地を購入しました。地盤が心配なのでスウェーデン式サウンディング試験で調査しました。その結果、地盤がややゆるく調査会社は杭を打った方がよい、工務店はべた基礎を強化(コンクリート量と鉄筋を増やす)した方がよいと言うことが違います。
その調査結果を判断してもらえないでしょうか。
回答
【Q.1】 どちらにすればよいのか?
- 結論から言えば、地盤補強の必要がある地盤だと推定します。
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地形的に「谷地」に該当しているのであれば、その可能性はさらに高くなるでしょう。
※ 住所が抹消されているので、地形を検索できませんでした。 -
ただし、3ヶ所のデータに顕著な差異がなく、地盤のバランスは悪くないので、基礎に剛性補強を施すことによって不同沈下対策とする方法も考えられます。
※ 剛性補強:ベタ基礎(厚さが少なくとも150mm、シングル配筋の横筋のピッチが200mm程度)などたわみの小さい基礎で支持させると、沈下が発生した場合でも、斜めに傾く不同沈下が起こりにくくなります。 - 地表1m程度までの瓦礫は、人頭大ほどの大きなものは、砕くか除去し、基礎に接触して「てこの支点」となることを防ぐ必要があります。
- 新規に盛土が予定されている場合は、地盤自体を補強するのが望ましいでしょう。
【Q.2】 N値と基礎の関係は?
- たとえば同じN値3でも、2mの層厚と4mの層厚では、評価が異なります。また、同じN値、同じ層厚でも、基礎の直下と基礎から離れた深い深度に分布するのでも評価は異なります。さらに、同じN値、同じ層厚、同じ分布深度でも、盛土が施された時期や建物の重さ、建物自体のバランス次第では評価を変えなくてはなりません。要するに一筋縄ではいかないということですが、およそ、N値≦3を軟弱地盤とし、その層厚と分布深度から、当社ではプログラムで診断しています。
- ベタ基礎は、N値にかかわらず、不同沈下対策として有効ですが、地盤のバランスと瓦礫の状態を見誤るとかえって沈下を助長することになります。特効薬には副作用があるのと同じです。
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地盤補強工事は杭基礎ばかりでなく、地盤改良工事も非常に有効です。杭基礎の場合は、調査で貫入不能となった「締まった層」と推定される層が、実際は薄い中間層であることもあり、この試験結果から無理なく設計できるのは 地盤改良ではないかと考えられます。
※柱状地盤改良(ソイルセメントコラム)φ600mm×5m×基礎の総延長と建物の総荷重から算定される本数
【Q.3】 3t基礎qa値とは?
- 地盤の強さは2面的に考察されなくてはなりません。
- 物質を破壊するのにどの程度の外力を加えると、破壊が起こるかを推測するのが、qa(長期許容支持力度)の検討です。
- 算定式が提唱されており、ここでは基礎の幅を代入する項があります。
- 報告書中の「3t基礎qa値」とは、「3t基礎qa値[450]」という表記の450に意味があり、基礎幅が450mmのときの長期許容支持力度がいくつであるかを深さ方向に計算した結果が並んでいるのです。数値はいずれも3tを超えているので、この欄だけをみれば地盤の支持力が3t以上はあり、杭基礎が必要であるとの結論とは整合しません。
- この報告書では意図的に伏せられているらしい、地盤の強さを表すもう一つの側面「地盤の変形による許容沈下量」の推定が抜けています。
- 地盤は、一般の固体物とは異なり、破壊しないからOKということにはなりません。破壊しないのに圧縮することがあるのです。瀬戸物の茶碗などは圧縮する前に破壊現象が優先して起こりますが、地盤は、破壊する前に圧縮が徐々に発生するのです。
- 当社では、圧縮による変形(=沈下)を定量的に把握すするために、ある式を導入し沈下量の推定まで行い、それをランク付けして表記しますが、本報告書では推論と結論の間に論理の飛躍があるようです。勿論、基礎だけで大丈夫という結論にも客観的な根拠がないという意味では同断です。
【 お願い 】
ご相談の事案に対する回答は、限られた情報によって推測される所見であることをご承知ください。
したがって、この回答を直接的に交渉や請求の手段とすることはご遠慮くださるようお願い申し上げます。