住宅地盤相談室に寄せられたご相談内容 No.100

相談内容

横浜市泉区の丘陵地に土地を買い大手工務店で2×4木造2階建て住宅(床面積約100m)を建築中です。この土地は4ヶ月までは畑だったもので、造成後一部盛土(擁壁高さ最大80cm)となっています。

建築前に地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験)を実施したところ結果は、推定土質は粘性土、全体的に1mまでN値3~5の層があり、その下層は1.75mまでN値1.5~2の層、さらに3mまでN値3~5の層に続いています。そこから先は測定した3点のうち1点についてはN値5以上、他の2点は3~3.75mに再びN値2~3の層が現れ、そこからN値5以上の層となっていました。将来圧密沈下が生じる恐れがあるという判断でいわゆる柱状改良工法(直径60cmの柱を26本施工)により地盤改良を行うこととしました。基礎はベタ基礎です。

ここまではよかったのですが、いざ基礎を施工するという直前になって初めて柱状改良の深さが2.5mと知らされ、疑問をぬぐいきれず相談させていただいたしだいです。

といいますのも、明らかに2.5mより深い3~3.75mの層にN値2.3から3の層が存在しており、この層に圧密沈下が生じれば(しかも1測定点についてはその深さではN値が15に達しており不同沈下になる可能性大)そこから上部で柱状改良を施したとしても無力ではないかと考えた次第です。

工務店に対して、柱状改良の深さを2.5mとした理由の説明を求めているのですが、口頭で「絶対に大丈夫です」というものの、文書による説明を求めたところなかなか回答が帰ってこないという状況です。この間にも、建物事態の工事はどんどん進んでしまっており現在2Fの壁枠組みの施工中です。問題がクリアになるまで工事ストップをかけるべきではないのかと悩んでおります。専門化の立場から不同沈下の可能性、現時点からの対応策などについてご教授いただければ幸いです。

回答

  • ご相談の内容だけから言えば、不同沈下の可能性があるのではないかと考えます。 ※ ご指摘の通り、改良工事の先端は同一の硬さに定着するのが理想的です。
    ※ 事が微妙なので、地盤調査結果、調査位置、立地条件を判断するための配置図、地形条件を特定するための案内図、地盤改良工事の施工報告書などの資料を郵送でお送り下さい。さらに具体的な提案ができるはずです。
  • 現時点での対応策は、残念ながら打つ手がないと申し上げざるを得ません。
  • できることは、工事自体のことではなく、契約書の見直しとアフターメンテナンスの対応の確認です。瑕疵担保保証の期限が何年間になっているか早急に確認すべきです。10年間となっていれば、それまでに発生すべき不具合は露見しているはずなので、保証の対象となると考えられますが、仮に数年間であれば、保証期間の伸長を要求してみることです。
    ※ 現時点で基礎の上端部、擁壁の上端部のレベルを、建物の影響を受けない道路上のマンホールなど特定の測点を基準として測量しておき、毎年定点観測して追跡すれば、沈下の発生が早期発見できます。
    ※ 地盤改良工事会社では、建築会社との間で長期の保証契約を行っている場合があります。確認して下さい。
    ※ 工事を差し止めることについても、契約書に制限する条項があるのではないかと思います。確認が必要です。
    ※ 法的な相談は「欠陥住宅を正す会」が親身に相談に乗ってくれます。http://www.path.ne.jp/baumdorf/

◆以降は、郵送頂いた調査資料等を拝見した後の追加回答です。

  • スウェーデン式サウンディング試験の結果から判断できる改良長の設計は、一応は妥当だと思います。支持力計算も根拠があります。
  • 当社でも意見が分かれるところですが、山側を2.5m、道路寄りを4~4.5mで設計するのが、一律2.5mで設計するよりも安全性が高いとは言えると考えますが、実際の施工では信頼性設計と経済性設計とのせめぎ合いなので、どちらが正しいと断定することはできません。
    ※ -3.5m付近の「自沈層」は堆積してから十分に時間が経過しているだろうということを前提にすると、改良体の先端によって圧縮が進むとは言い切れません。
  • 保証は10年間のようです。
  • 工事の設計・施工に明らかな瑕疵を特定できない以上、実際に不具合が出るまでは様子をみるのがよいと思います。瑕疵に該当する項目には数値の目安がありませんが、今春施行される「住宅品質確保促進法」によれば、0.5mm以上の基礎のひび割れ、床の傾斜で6/1000以上が瑕疵である可能性が濃厚であるという判断基準が示されています。

【 お願い 】

ご相談の事案に対する回答は、限られた情報によって推測される所見であることをご承知ください。
したがって、この回答を直接的に交渉や請求の手段とすることはご遠慮くださるようお願い申し上げます。