地盤を知る
同じように平らに見える宅地でも、場所によってその地盤構造が大きく違います。軟弱地盤なのに有効な対策のないまま家を建てると、不揃いに沈下するいわゆる"不同沈下"が起こります。夢にまで見た新居が傾いてしまわないために、地盤を知り、対策を立てることは非常に大切なことです。
軟弱地盤を見分ける
不同沈下を起こしそうな軟弱地盤を知るには、専門業者に依頼して現地での地盤調査を実施してもらうのが一番ですが、基本的なことは把握しておいたほうがいいでしょう。
軟弱地盤は低地に多い
低地には雨水や地下水が四方から集中して集まります。雨水は背後の高台から微細な泥を運んでくるため、何千年という長い年月の間に、厚く堆積して軟弱層を形成しています。
- 坂道の下りきったところは低地
- 水路や川、池のそばは低地
- 水に関係のある漢字を使う地名は低地が多い
(池、渡、流、湘、島、崎、泉、谷、田、鷺、萩など)
盛土は要注意
地盤の弱い低地には盛土がかかせません。しかし1mの盛土は建物よりも重く、土の重さだけで圧密沈下しかねません。また建設廃材(ガラなど)が混入されている場合は、地盤沈下の新たな火種となります。
一方、本来は地盤良好な高台の斜面造成地も、図のように工作物沿いの掘削埋め戻し地盤が締固め不十分だと、バランスが悪くなり注意が必要です。
一般的な住宅地盤調査はSWS試験(スクリューウエイト貫入試験)
戸建住宅建築前の地盤調査は今や当たり前。わずかな費用で一生の安心が買えます。
SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)は戸建住宅では最も広く行なわれている地盤調査方法です。100kgのおもりの力でねじ状になった先端部を回転させながら押し込んで、そのときの半回転数(Nsw)を測定して地盤の硬さを調べます。
調査報告書は実測データだけでなく、そのデータから調査地盤の基礎仕様及び軟弱地盤対策の提案をしているのが一般的です。
通常50坪程度までの敷地で5ポイントを調査します。2時間ほどで終了します。
マンションの地盤と戸建住宅の地盤
マンションを建築する際の地盤調査の目的は明確です。N値(エヌチ)50という硬い地層が5m連続する層(支持層という)を見つけることです。支持層がどんなに深いところにあってもそこまで杭を打たなければ役所への建築確認申請は通りません。従って、よほどずさんな設計・工事でない限りマンションが傾いたりすることはありません。(想像をはるかに超えた自然災害は別ですが)
それじゃ戸建住宅も同じようにやればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、下記の理由からそうはいかない状況にあります。
- 支持層を見つけられる地盤調査はボーリング標準貫入試験しかなく、費用がかかることと調査に必要な広いスペースの問題から、戸建住宅には適していない。
- 上記のことから戸建住宅の地盤調査では一般的にSWS試験(スクリューウエイト貫入試験)が用いられるが、この調査方法では地盤を断定的に判定できないため、不同沈下に対して安全かどうかの判断は、ある部分考察者の主観が入ることとなる。
- 深層杭工事に使われる施工機が敷地に搬入できないことが多い。また費用がかかり過ぎる。
- 建築基準法にも「地盤に注意すること」程度のあいまいな規定しかない。
- 戸建住宅は価格競争になりやすく、地盤対策費も原価の一部として設計変更の対象となることがある。
このようなことから、戸建住宅の地盤の診断および対策方法には、客観的・絶対的な基準がなく、地盤対策は建築業者の判断に委ねられることになります。A社はべた基礎の設計、B社は地盤改良の設計というのはよくあることで、どちらかが間違っているとは言えません。